弟の遺骨に会ってきた話
どストレートなタイトル。
でもそれ以外でもない。
不思議な感覚で、言葉に出来ない。
「言葉に出来ない」なんてフレーズ、ずっ小田和正に対して「あ、丸投げした」と思っていたけれど、32年と11ヶ月生きてきて初めて理解できた。
状況は、歌と違う気がするけれど。
姿は変わっても今日のことも弟との思い出には変わりないし、気持ちの整理のために文章化する。整理できるのかな。
記憶が薄れて欲しくないので、必死に文章化する(@帰りのカフェ)。
果たして、どんなものが出来るのか。
どうなるどうなる。
**
弟はスイスへ旅立ち、半年以上かけてダイヤモンドになる。
9月下旬、実家を離れて、ダイヤモンドに加工してくれる仲介会社のある、私の自宅から車で20分くらいのところに来た。
そして今日13時、スイスへ旅立つ前に、時間を作ってもらい、会いにいってきた。
会いに行くと決めてから、複雑だった。
やっと会える。
でももう会えないのが現実だって突きつけられる。
でも整理が出来るかもしれない。
でも、のエンドレス。
日に日にお腹が緩くなり、今日のお昼は食べられなかった。
厳密に言えば、レタス数枚食べた。青虫よりは食べてる。
今日は割と好きなワンピースを着た。
婚約中という1番楽しい時期に、夫にもらったパールピアスを着けていくことにしたが、手が震えて装着に時間を要した。
合成ダイヤモンドになる彼の手本となるよう、夫にもらった婚約指輪も装着。
ヘアメイクは諦めて、準備はバッチリ。
近くに住んでいる、姉のような方に娘を預けに行き。
夫に近くの駅まで送ってもらい、いざ、仲介会社の最寄駅へ。
夫は「電車だから、コロナに感染しないようにね」と無茶苦茶な言葉と共に送り出してくれた。
そしてハンカチを忘れたことに気付き、コンビニで買わなきゃ、と呟いたら「新しいハンカチって吸水性ないよね」と返された。
なんなんだよMy husband 。
行きの電車で、背中に痛みを感じた。
朝貼った、ロイヒつぼ膏を剥がし忘れた。
指先を見ると、剥がれかけてきて糸くずがたくさん付いてるキズパワーパッド。
準備バッチリじゃなかった。
でももう、前進あるのみ。電車止まんないし。
駅に着いて、近場でハンカチを見つけた。990円。
高いが、約束の時間に間に合うにはそれを買うしかない。
せっかくなら弟が好きな柄にしようと、ザリガニ柄を手に取った。
けれどテンションが上がらなかったので、ブルーの花柄にした。
お店を漂う柑橘系アロマの香りは、弟が好きそうなスッとする香り。
これからに向けて、頭がクリアーになる。
レジに行ったら「440円です」と言われた。
全然頭クリアーじゃなかった。
最寄駅に着き、セブンでお茶を買う。
弟みたいにレシートをゴミ箱に放り投げてみた(いつもは家計簿に記録)。
上手く入った。良かった。
いっぱい色んなことを考えて、冷静に努めて歩いてみたけれど、難しい。
結局弟のことだけ考えて歩いていたら、ビルに着いて、エレベーターのボタン押してて、弟の遺骨の元にたどり着いた。
小さくなったな。
10年以上前に身長抜かされてたのに。
仲介会社の方に挨拶をした際、弟のことを何度か「お兄様は〜」と言われた。
なんか腹立ったので、その都度「弟です」と間髪入れずに言い返した。まったくもう!
両親が書いた申込用紙が目に入った。
弟の名前と生年月日、そして、死亡日。
最後にテレビ電話をした日の、翌日。
本当に、死んじゃったんだ。
苦しまなかったの、かな。
これを書いた両親の気持ちを思うと辛いけれど、いつも通りの筆跡だった。
すごいぞ、両親。私なら手が震えそう。
弟を抱っこした。
弟と触れるのなんて、上の子がお腹にいる時に『動くの?』と不思議そうに私のお腹を触ってきたとき以来。
抱っこした弟は、今の私の子供たちよりずっと軽かった。
新生児時代よりも軽かった。
色々と話そうと思っていたのに、何も言葉が出てこなかった。
ただただ、涙と鼻水だけが出てきた。
言いたいことはたくさんあった、怒ってること悲しいこと楽しかったこと。
頭から全部無くなった。
ただただ、胸が苦しかった。
容器を開けてみた。
祖父の葬儀で見たものとは違って、立派に、しっかりと残っていた。
持ってみた。
全然崩れたりせず、丈夫だった。
まだまだ酷使される気満々、という感じの骨たち。
下顎を見た。
当たり前だけれど、弟のフェイスラインだった。
また言葉が出ない。
しばらく眺めた。
何を思うわけじゃなくて、ずっと。
ただただ、眺めた。
ずっと眺めているのも会社の方に悪いかな、と思って、容器は閉じてもらう。
でも名残惜しくて、再び抱っこした。
「お姉さんのご納得が行くまで」と言われたけれど、気にしぃの弟に『姉貴、そろそろ。会社の人には他にも仕事あるだろうから』と言われたような気がして、彼と離れた。
そして最後に箱をパシンと叩いて、「スイス行ってこい、飛行機に乗るまでウチに遊びに来い」と姉貴らしく声を掛け。
そして、会社を後にした。
**
会社の滞在時間は1時間。
前と変わらず、寂しくて悲しくて辛くて苦しい。
ここまで書いても、やはり気持ちの整理は難しい。
ただ、なんか、吹っ切れた気がする。
正体は不明、なんだろう。
敢えて名前をつけなくても良いか。
これを機に人に優しく…
なんてことはなく、この先も子供たちの前でオニババとなり、仕事では愚痴を言い、終わらない家事に舌打ちするだろう。
あとは、ときぐすりに、お任せ。