すずうくぬつ

自分のための、弟のしじゅうくにちです。その日に思い出した弟との思い出を忘れないように、必死こいて文字化しています。

お好み焼き

先日、両親が帰った。

弟がいなくなって3ヶ月が経つが、まだまだ、やらねばならないことがあるからだ。

娘としては、「息子との思い出に向き合うだけの時間」を過ごしてほしいところだけれど。

「あの子が可愛いから、あの子のために頑張る」とのことで。

このブログの存在でもカミングアウトして(前回・前々回の記事を削除したうえで)、

思い出話にケラケラ笑う時間だけを過ごす予定だったけれど、

まだ早い。心からは無理だ。

行政手続き、ルールとはいえ、担当者も他の業務があるから付きっきりになれないとは頭で分かっているが、本当に残酷だ。

(しかも君たちのエラーじゃないか…)

 

両親が帰る前日は、子供たちと両親4人で公園へ。

わたしと夫は夕食の買い出しへ行った。

お好み焼きの食材を買いに。

実家に帰った時、弟が料理を担当するときは必ずお好み焼き。

息子にもその印象が強く残っていて、「おじちゃんが作ったお好み焼き!」とよく言っていた。

キャベツの千切りが下手くそで、『ふぅー、キャベツ全部切ったー!』と言って仕上がったモノは短冊のようなキャベツ。

母に「おまえ、それは千切りじゃねぇ十切りだ」とダメ出しを食らっていた。

『なかなか真ん中まで火が通らない』と言って、ホットプレートに蓋をしたりお好み焼きをぎゅうぎゅう押しつけたときは、

父に「それはお好み焼きの作り方じゃない」とダメ出しを食らっていた。

私と息子との3人で材料の買い出しに行ったとき、『俺、海鮮入れたら最高に美味しいと思う!』と自信満々だったので、息子をカートに座らせたまま、私と弟2人で海鮮ミックスの種類、量を悩んで悩んだ。

作る前に海鮮ミックスが解凍されていないと気付いて、流水解凍する際に袋から出しており、

私に「ねぇ、流水解凍って袋のままじゃないの?」とダメ出しを食らっていた。

四方八方からダメ出しフルボッコのように見えるけれど、特に怒ることなく『えー』と言いつつ従う弟。

出来上がったお好み焼きはとても美味しく、息子も目の前で出来るのが楽しいのか、大好きだった(熱いこと以外は)。

 

そんな思い入れのあるお好み焼き、両親が来たときに必ず作ると決めていた。

色々思い出しながら、夫と買い出し。

夫はビールを選んだ。

1人では飲まない父と一緒に飲んでくれるようだ。

私は山芋を買い忘れるエラーを犯したが、数時間後に両親と息子が散歩がてら買いに行ったのでセーフ。

 

そして夕方。

スライサーでキャベツをものすごく細くした。

海鮮の解凍を忘れ、且つ流水解凍の前にザルにぶち込んでしまったので、そのまま流水をかけた。

子供たちにコッソリ野菜を食べさせるため、人参ピーマンを細かくして生地に潜り込ませた。

おろした山芋を混ぜた。

そして夏に買ったホットプレートの、こけら落とし

息子は「お好み焼き!お好み焼き!」と大喜び。

そして窓の外を見て、こう言った。

「おじちゃんはまだ来ないのかなぁ?」

 

そうだね、いつも作ってたのはおじちゃんだもんね。

「おじちゃん、白い車に乗ってこないかなぁ、お母さんの車と同じ、白!」

好きだったよね、おじちゃんの車。

私のダッサイ軽とは雲泥の差。

その後も息子の口から、出るわ出るわ「おじちゃん」。

母が「おじちゃんはね、遠いところに旅行しているから来れないんだよ〜」と教えた。

息子が「そうなの?さみしい…」と答えた。

母が「そうだねぇ」と答えて、息子が視線を逸らしたタイミングで、目頭を押さえながら天を仰いだ。

このときの父の様子は見ることが出来なかった。

確か娘と一緒に遊んでいたと思うが、元国体選手のたくましい父の大きい背中が、小さく丸くなっている現実が、未だに受け入れられなかったからだ。

 

とりあえず2枚焼き上がったタイミングで、食欲旺盛な1歳、3歳児は待てるはずもなく。

軽く冷ましてから一口サイズに切り、先に与え、次の分を私はせっせと焼いた。

焼き上がっては子供用は冷まし、大人用は各自の皿に滑り込ませ、また焼く。

とてもじゃないが自分の分を食べる暇はない。

弟はこんなに大変だったのか。

すごいぞ、ダメ出しフルボッコでもこんな大変な役を引き受けるなんて。

でも私は同時に汁物とサラダも作ったぞ、と心の中でマウント。

 

8枚分の生地とはいえ山芋入りはすごいボリュームで、最後の1枚は譲り合いになった。

食後に、母から「とっても美味しかったよ、お父さんなんて感動しているよ」と言われたが、色んな意味を感じ取った。

これからは、お好み焼き担当は私が継ぐことになりそうだ。

 

そんな感じで、両親の滞在は終わった。

チャージ出来ただろうか。

父は、私と同じく未だに寂しさと怒りで動いているところがある。

分かりすぎて辛い。

 

それにしても、この滞在(と言っても宿泊は近くのホテル)を受け入れてくれた夫には感謝だ。

気を遣っただろうに、「大人の手がたくさんあって、楽できた」と言ってくれてありがたい。

普段は

乾きにくいルームウェアを買ってきたのは自分なのに「生乾きクサイ」と文句を言っていたり、

乾きにくい裏ボアの服を選んで洗濯カゴを溢れさせたり、

洗濯機に洗濯物をパンパンに詰め込んで乾燥までやりかけて私に怒られたり、

私がコロナ疎開中に一つも粗大ゴミを出さずに逃げ恥を何周もしていたり、

頭を抱えることはあれども、

やはり感謝だ。

 

両親だけじゃない、夫にもここの存在、バレませんようにー。