ガム
息子が最近、咀嚼する真似をしながらこう言う。
「ガム食べてるの。今ね、おじちゃん(ごっこ)なの」
「(紙を広げる仕草をして)これ、ティッシュね。ペッしまーす。ガム、ペ!
クルクル〜ってして、ゴミ箱ポイです!」
礼儀正しいようだけれど、咀嚼する仕草はあまり上品ではないぞ。
弟はガム大好きっ子だった。
子供の頃から。
近所の床屋さんが、子供には必ず10円ガム(FELIXのイラストが描かれたマルカワのアレ)をくれるところで、中にあたりクジがあることも含めて、大好きだったようだ。
同じくマルカワの、フルーツガムも大変好んでいた。
ガムボールマシーンも大好き。
私から見れば、色は毒々しいし、無駄に大きいし、味も大したことがない…と思っていたが。
年齢1桁時代の弟には魅力的だったのだろう。
見かけたら母におねだりしていた。
ただ、そんな弟に悪い癖があった。
ガムを飲み込んでしまうことだ。
両親共に「ちゃんとティッシュとか、ガムが包まれていた紙に出しなさい!」と口を酸っぱくして注意していたが。
面倒だったのだろうか、飲み込むエブリデイ。
そしてあるとき、『ウンコがなかなか出ない』と親に訴えていた。
両親曰く、「ガムを飲み込むから、お尻の穴がガムで閉じちゃったんだよ!」
んなわけあるか、と思いたいが、子供の頃は本気で信じた。
弟だけじゃなく、私までビビって「ガム怖い」という風潮になった。
その後、多分無事に便通はあったのだと思う。
そしてどういうわけか、大変快便くんになった(うんち - すずうくぬつ)。
ガムの飲み込みをやめたからかなぁ。
ある程度大きくなると、ボトルガムを常備するようになった。
机の上にあったし、車を手に入れてからはドリンクホルダーの1つはガム。
息子は車に乗せてもらった時のそれを覚えており、コンビニでボトルガムを見かける「これはおじちゃんの車と同じ!」と必ず言う。
味はだいたいハード系で、刺激に弱い私は貰いながらも早々に出してしまい、
『姉貴もうガム終わりかよ、もったいねぇ』
と嗜められた。
どういったキッカケで息子が「ガムを食べるおじちゃんごっこ」にハマったのかは、わからない。
ただ、ハマるとそこそこ続くので、トコトンおじちゃんのことを思い出してもらおうと思う。
親のエゴと言われても、良い。
そのうち、色々上書きされてしまうんだから。
なお、私も子供の頃、なんやかんやガムを食べていた。
ある日、ガムを食べながらテレビを見ていたら、母から「お風呂に来なさい」と呼ばれた。
お風呂で飲食はダメだと言われていたので、ガムを捨てようと思ったのに、良い紙がない。
どうしようか悩んだ結果、ガムを自分のおへその中に入れることにした。
お風呂場で私のへそに入ったガムを見つけた母に、怒られた。
かたや便秘、かたや臍の中に捨てる。
母としてガムって忌々しいお菓子なのではなかろうか。