すずうくぬつ

自分のための、弟のしじゅうくにちです。その日に思い出した弟との思い出を忘れないように、必死こいて文字化しています。

お土産のチョイス

先日の動物園。

娘はベビーカーの中で言葉を発さずに動物を眺めていた、はず(何度か「居るよね?」とベビーカーを覗いた)。

息子はアザラシとライオンに怯えていた。

楽しかった、のかなぁ。

でも1年前、娘がまたお腹にいる時は、エントランスのパンジーを眺めているだけだったので、それに比べたら成長したと思う。

私はお土産屋さんを遠目に眺めていた。

 

弟が小6の修学旅行のとき。

クラス全員が乗ったバスが学校に到着するとき、多くの親が「荷物重たいだろうから」と言って車で迎えに来ていた。

6年生は一旦バスから降りてきたら整列し、先生のちょっとした事務連絡を聞いてから、親のところへ…そんな流れ。

弟はバスから降りてきた時点で、1人、べらぼうに大きな袋を持っていたそうだ。

 

それは高校入学と共に実家を離れた、私へのお土産。

修学旅行から戻ったあとの週末、私の下宿先に大きい袋のまま持ってきてくれた。

『これ、お姉ちゃんにお土産。』

袋の中身は、水族館で購入した、大きなイルカの抱き枕というかぬいぐるみというか。

とっても柔らかくて気持ちいい。

すごく喜んだのを覚えている。

 

喜びながらも、その1年前、私が中3のとき。

土産のことで一悶着あったのを思い出した。

私が修学旅行で、同じく水族館へ行き、弟へお土産を買った。

小5男子の欲しがるものなんて全く分からず、弟には水族館限定デザインの可愛いタオルを。

自分には、リアルなイカの標本キーホルダーを買った。

そして帰宅してから荷物を片付けつつ、家族にお土産を渡した。

渡し終えたとき、弟はなんか浮かない顔。

せっかくあげたのに、と思いながらも片付けを進めていると、父が部屋に来た。

 

「あのハンカチとお前のキーホルダー、交換出来ないか?」

思いがけない申し出に、私は怒った。

キーホルダーは、とてもリアルでカバンに付けたら面白いと思っていたからだ(中3女子の思考回路…)。

何故、気に入らないという理由だけで、そんなことをしなければならないのか。

私はキーホルダーを気に入って買ったんだぞ!

父は私の言い分に耳を傾けつつも、

「あのくらいの年齢の男子は、可愛いタオルよりも、標本とかの方が好きなんだよ」

そのあとも色々と譲歩されたような気がするけれど、覚えていない。

結局最後は弟と交換した。

弟は嬉しそうに、机に置いていた。

 

話は戻って。

小6の弟は、中3だった私よりも遥かに賢く、女子高生のツボを抑えていた。

そして、そんなにたくさん持ち歩けない現金のうち、たくさんを私のお土産のために使ってくれた。

自分の好きなモノは、買えたのだろうか。

あんな大きな袋、身長150cmもない頃に持って歩くのは大変だったんじゃないか。

イルカの大きなぬいぐるみは、私を怖がっていて何とか怒られないように選んだのか、それとも私が喜ぶと思ったから選んだのか。

後者であって欲しいな。

 

そういえば去年、娘出産後退院して実家に戻る車の中で、キョウダイになった子供たちのことを考えながら、運転席にいる弟に聞いた。

「私は“お姉ちゃんでしょ”と言われるたびに、弟がいることを疎ましく思うことがあった。

下の兄弟の立場として、上を疎ましくなるときってどんなときだった?」

『んー、俺は姉貴を疎ましく思ったことはないよ』

即答されてしまった。

 

そういえばイルカのぬいぐるみ、昨年里帰り出産のために帰ったときに、人形供養に連れて行ったんだった。

弟に一応聞いてみたら、

『手を離れた時点で、所有権は渡した先の人にあるから(別にいいよ)』

とのことで。

私と母がよく言ってることを弟も言っていた。

酷使して、毛玉だらけで綿も偏りまくっていたな、あのイルカ。

あちらの世界で逢えるものなんだろうか。