弟の遺骨を家に連れて帰ってきた話
どうしよう、またどストレートなタイトルだ。
でも、それ以外の何でもないのです。
遺骨をダイヤモンドにすることにしたけれど、全てダイヤモンドにするのは寂しい。
そこで、両親は一部を手元に置いておくことにした。
スイスに行かなかった遺骨は、粉骨処理したのち、先日ダイヤモンド加工してくださる日本の代理店に置かせていただいている。
しかし両親はまだ体力的に辛く、県外の代理店まで受取りに行くのは難しい。
ということで、私が受け取って、弟にはしばらく我が家で過ごしてもらうことにした。
息子のおもちゃにならないように見つからないよう、でも大人にはよく見える、リビングの一角で。
娘を保育園に預け、病院にインフルエンザの予防接種問診票を貰いに行き、ドラッグストアで買い物して、代理店へ。
前回会いに行ったときとは違って、変な緊張感はなく、自然な気持ち。
至って普通に代理店の扉を開けた。
至って普通に、粉骨処理された遺骨を確認した。
粉骨処理されたという証明書を見た。
故人様、の欄に弟の名前がある。
やっぱり、死んじゃったんだ。
当たり前だけれど、毎日してたLINEも来てないし、電話ももうしてない。
そもそも、既読にならないし。
両親が涙を堪えながら「行方不明だ」と連絡してきたのも、
父親が泣きながら「見つかった」って電話してきたのも、
母が泣かずに「今日火葬だよ」って電話してきたのも、
母が泣かずに「お葬式やるよ」って電話してきたのも、
全部、声のトーンまでハッキリと覚えているのに。
それなのに、やっぱり、って思う。
まだわからないんだな。
受け取った遺骨をバッグへ入れ、少しお散歩して、その足で予約していた美容院へ。
我ながら弟の遺骨と美容院なんて、と思ったけれど、前々から予約していたんだから仕方ない。
気分的に、バッサリ切ってもらった。
2人暮らししていたときに、美容院から帰ってきても何も言わない弟に何度か怒ったことを思い出した。
終わってから大豆ミートのカフェに行ってみた。
割と、肉っぽい。
脂質を気にしていた弟が食べたらなんで言うだろうか。
『食感が苦手』か。
『割といけんじゃね』か。
なんやかんや、ずっと弟のことを考えて歩いて運転していた。
のに、娘をお迎えに行って車に乗せてから、完全に吹っ飛んだ。
帰宅してから、弟が入っているリュックを放り投げるくらい。
ごめん、弟。娘がグズったのだ。
まずは箱だけ、リビングの一角に置く。
夕方と夜のドタバタを乗り越えてから、ようやく遺骨を箱から出し、ごあいさつ。
子供たちが居ない時間はリビングの出窓に置くことに決めた。
最期は1人だったんだ、これから両親が来るまでのしばらく、姉貴と甥っ子姪っ子の賑やかな声を聞きながら楽しく過ごそうぜ。
たまに、こやつらのイヤイヤを鎮めてくれ。
あと、冷凍庫にふるさと納税で届いた大量のサーターアンダギーがあるから、好きに食べな。
酒は無い。許せ。
今月中に、両親の還暦祝い一緒に買いに行くよ。
2人で積み立てたお金、ちゃんと親に使うから安心しなさい。
じゃ、今夜から、よろしく。